生活習慣病について

独立行政法人国立病院機構 西別府病院 内科医師 財前行宏

1. 肥満症-内臓脂肪の蓄積とメタボリックシンドローム-

わが国では、死因の第1位が悪性新生物(がん)で、2位心疾患、3位脳血管疾患です。
第2位の心疾患と第3位の脳血管疾患を合わせると、がんを抜いて第1位になります。第2位と第3位は血管の病気で、これらの血管病変を引き起こす原因は動脈硬化です。動脈硬化の危険因子として、コレステロールそれに肥満、血圧、血糖値等があります。

生活習慣病である「肥満」「糖尿病」「高血圧症」「高脂血症」は、中高年がかかりやすく、しかも単独でも厄介な疾患ですが、これらの疾患が重複すると動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞などを起こしやすくなってきます。 

これらの疾患は個々の原因で発症するというよりも、肥満、ことに内臓に脂肪が蓄積した肥満が犯人とされています。内臓脂肪蓄積により、こうした疾患が重なって引き起こされた状態は、「メタボリックシンドローム(代謝異常症候群)」と呼ばれ、最近注目されています(図1)。

図1. メタボリックシンドロームとは

2. 肥満の2つのタイプについて

体のどの部分に脂肪がつくかによって、肥満は2つのタイプに分かれます。下腹部、腰のまわり、太もも、おしりのまわりの皮下に脂肪が蓄積するタイプを「皮下脂肪型肥満」、内臓のまわりに脂肪が蓄積するタイプを「内臓脂肪型肥満」とよびます。体形からそれぞれ「洋ナシ型肥満」「リンゴ型肥満」ともよばれています。この2つのタイプのうち、「内臓脂肪型肥満」は、現在合併症はなくても、将来これらの合併症を伴う可能性の強い肥満であり、肥満症と診断します。内臓脂肪型肥満の診断は、CTによって行なうのが正確です(図2、図3)。

図2. CTによる画像の診断:内臓脂肪型肥満

図2. CTによる画像の診断:内臓脂肪型肥満

図3. CTによる画像の診断:皮下脂肪型肥満

図3. CTによる画像の診断:皮下脂肪型肥満


3. メタボリックシンドロームの診断

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積を基盤として、耐糖能異常、高脂血症、高血圧の複数の疾患を合併する病態です。この為、それぞれの疾患のリスクが高くなくとも、複数合併すると、ハイリスクとなります。危険因子の保有数が多くなるにつれて、心臓病の発症リスクが急激に高くなってきます(図4)。

肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病の危険因子を3つ以上持つと、危険因子を持たない人に比べて、心臓病になりやすさは、30倍以上になります。  メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積が病態の本質ですので、腹部CT検査を実施して、臍の高さでの内臓脂肪面積100 c㎡以上の場合とされています。また、診断の補助的診断として、診断基準が設定されています(表1)。

 
表1. メタボリックシンドロームの診断基準
 
  1. ウエスト周囲径        男性は85 cm以上、女性は90 cm以上
  2. 血圧              130/85 mmHg以上
  3. 中性脂肪(TG)値     150 mg/dL以上
  4. HDLコレステロール値      40 mg/dL以下
  5. 空腹時血糖値        110 mg/dL以上   

上記基準のうち、1)に加えて、2)~4)のうち、2つ以上を満たすもの。
今後、増加すると思われるメタボリックシンドロームを診断する目的は、動脈硬化性疾患ことに心循環器疾患に対してハイリスク状態であることを認識して、適切な対応を行なうことにあります。

4. メタボリックシンドロームの治療

メタボリックシンドロームと診断された場合、治療が必要になってきます。疾患そのものに対する治療、たとえば高血圧に対する降圧薬や、糖尿病に対する血糖降下薬、高脂血症に対するコレステロール低下薬等は、治療の本筋ではありません。治療の主目的は、肥満症に対する治療によって、内臓脂肪の減少を実施し、病態を改善することです(図5)。

図5. メタボリックシンドロームの治療目的

■おわりに

わが国における肥満の特徴は、肥満の程度が軽度にもかかわらず、疾患の発症率が高く、種々の合併症が引き起こされることです。メタボリックシンドロームによる合併症は、初期には、ほとんど自覚症状がない疾病の為、合併症の程度や、治療を必要とする肥満かどうかは検査によってしか判定できません。表1のメタボリックシンドロームの診断基準に1項目でも当てはまる人は、医療機関の受診をお勧めします。ことに、当院の「糖尿病外来」では、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病といったそれぞれの疾患を全般的に捉え、全身の疾患として、管理・治療していく事ができます。初期に診断して、治療を実施することで、合併症の発症を抑制し、健康な生活を送ることが充分可能です。当院の「糖尿病外来」は、金曜日の午前中が診察日です。受診される方は、当日朝食や飲み物を摂らずに、来院して下さい。

アクセスマップ

〒874-0840 大分県別府市大字鶴見4548番地 TEL:0977-24-1221 FAX:0977-26-1163

Copyright (C) 2016 Nishibeppu National Hospital. All Rights Reserved.