病気の予防について

独立行政法人国立病院機構 西別府病院 内科医師 財前行宏

わが国では、急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴って、「健康」に対する国民の関心が、 高まってきました。21世紀の医療は、治療から予防に中心を移してきています。 ところが、予防を実践し、予防が成功した場合に、 その結果は「何も起こらないこと」であり、予防の効果は実感できません。 それに反して、疾病を抱えた者に治療を実施すると、症状の改善に伴って、 治療の効果を体感することになります。 近年、予防医学の効果は、大規模臨床試験によって、判定されてきています。 

昨年2003年5月には、国民の健康の増進を図るため、健康増進法が施行されました。 さらに、予防医学の学問体系の確立を目的として、昨年、日本予防医学会が発足しています。 12月4日の第一回総会(京都)では、遺伝子レベルでの糖尿病の発症予防や、 食品成分による発がんの予防が話題になっていました。

■疾患の予防と治療

糖尿病や、高血圧、高脂血症といった生活習慣病に対する治療は、 これらの病態のコントロールを目標としています。 糖尿病については、血糖のコントロールを通して、合併症の発生を防止します。 高血圧、高脂血症を正常化することで、脳卒中、虚血性心疾患を未然に防ぐことになり、 これら疾患の治療は、予防に他ならないのです。

 
臨床疫学では、予防を、一次予防、二次予防、三次予防の三つの段階に分類しています。 一次予防は、健康的な生活をして発病を予防することで、 危険因子を除去して疾患そのものの発生を抑えようという試みです。 二次予防は、疾病を早期に発見し早期に治療することで、健康診断や人間ドックがこれに相当します。 三次予防は、合併症や再発の予防です。 既にがん治療を受けた人に対して、再発や転移を早く発見して治療することや、 重複がんの発見、治療後のリハビリが、これに当たります。 一般に、予防といった場合には、一次予防を指しています。

■がんの予防

がんは、動脈硬化性疾患と同様に、生活習慣がその発症に強く関与する広い意味での生活習慣病と言えます。 したがって、日頃から生活習慣に注意を払うことにより、 その発症をある程度抑制することが可能です。今後わが国では全人口に占める高齢者の割合が次第に増加し、 がんが年齢とともに増加することを考えた場合、がんの予防は、健やかな老後を送る為、 国民医療費の増加を抑制する為にも重要になると思われます。

 
世界がん研究基金と、米国がん研究機関は、委員会を結成し、1997年に報告書を刊行しました。 報告書では、がんと栄養の関係を判定し、「がん予防のための提言」を公表しています。 その内容を、表に示します。日本でも94年度からの「がん克服新10か年戦略」に伴い、 また、この提言を基にして、「がん予防12か条」が策定されています。

がん予防のための提言
食物供給と摂取 野菜、果物、豆類、精製度の低いでんぷん質主体の主食等、植物性食品
体重の維持 やせと肥満を避ける
BMI が 21~23 の範囲に収まるように
成人期の体重増加を5kg未満に
BMI =体重(kg)/身長(m)²
身体活動の維持 1日1時間の早歩きまたは、それに相当する運動
野菜と果物 1日400~800gの野菜と果物
他の機能性食品 1日600~800gの穀類、豆類、芋類
アルコール飲料 飲酒は勧められない
肉類 赤身の肉は、1日80g未満に
赤身の肉より、魚や鶏肉
脂質と油脂 高脂肪食品、特に動物性脂肪を避ける
塩分と塩蔵 高塩食品を避ける
かびの防止 かびた可能性のある食物を食べない
食品保存 冷蔵庫や適切な方法で食品を保存する
食品添加物と残留化学物質 不適切な使用は健康への害となる可能性がある
調理 こげた肉、魚等を食べない
栄養補助食品 上記の提言を守れば、がん予防のために栄養補助食品を摂る事は不要
番外 タバコ 禁煙
 

今年2004年度から、「第三次対がん10か年総合戦略」が始まります。 この戦略は、がんの罹患率と死亡率の激減を目標としています。

■まとめ

医療技術は、これまで、早期発見や治療に重点を置いてきました。 今後は、医療に、治療の成果や基礎的・臨床的研究は勿論のこと、 健康の増進の姿勢が求められることになり、 医療の分野としての予防医学の役割が、ますます重要性を増してきています。

 
参考文献:がん抑制の食品辞典(西野 輔翼:株式会社法研)
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